2016年5月17日火曜日

弁護士らしい話し(其の17)

「天然記念物」について

 小笠原でアオウミガメの煮物を食べました。
 四国徳島の日和佐海岸では、アカウミガメが天然記念物として保護されていることとの関係が気になりました。
 そこで関係法令を改めて調べることにしました。

 一般的定義として、天然記念物、Natural Monumentとしては、動物、植物、地質・鉱物などの自然に関する記念物とされています。

 このような保護法で最も有名なのは、文化財保護法です。

 我が国では、1919(大正8)年に制定された「史蹟名勝天然紀念物保存法」から保護行政が始まったと言われています。1950(昭和25)年に、同法は廃止され、文化財保護法(昭和25年法律214号)に引き継がれました。
 文化財保護法2条は、「文化財」を定義しています。

 ①項4号では、次のように定めています。

  「貝づか、古墳、都城跡、城跡、旧宅その他の遺跡で我が国にとつて歴史上又は学術上価値の高いもの、庭園、橋梁、峡谷、海浜、山岳その他の名勝地で我が国にとつて芸術上又は観賞上価値の高いもの並びに動物(生息地、繁殖地及び渡来地を含む。)、植物(自生地を含む。)及び地質鉱物(特異な自然の現象の生じている土地を含む。)で我が国にとつて学術上価値の高いもの(以下「記念物」という。)」

  そして、第7章に「史跡名勝天然記念物」に関する規定があります。109133条に詳細な定めがあり、「記念物」のうち重要なものを「史跡、名勝又は天然記念物に指定する」また、これらのうち特に重要なものを「特別史跡、特別名勝又は特別天然記念物に指定する」とし(109条)、また、登録記念物(132条)についても、定められています。

 ウミガメについての天然記念物の指定は、具体的には、次のように場所と動物との両方でされているとのこと。
   昭和42(1967)年 「大浜海岸のウミガメおよびその産卵地」
   昭和55(1980)年 「御前崎のウミガメおよびその産卵地」

 ところで、我が国が締結し、批准している条約に「ワシントン野生動植物取引規制条約」があります。「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」というのが正式名称であって、Wild  Fauna Flora、つまり野生動物と野生植物が保護の対象となっていますが、「附属書Ⅰ~Ⅲ」において掲げるものについて、異なった規制の手法が採られることになっています。

 Ⅰでは、商業目的の国際取引を原則的に禁止したり、Ⅱでは、商取引に輸出国の許可を必要としたり、また、Ⅲでは、原産国が独自に決定することが出来るとするように異なったレベルの禁止、制限が定められています。
 ジャイアントパンダ、ツキノワグマ、オニソテツはⅠ、
 オオアリクイ、キングコブラ、マホガニーはⅡ、
 アカギツネ、ワニガメ、インドマキはⅢとされています。
 なお、我が国は、国内産業保護の観点からウミガメやタイマイ等については、従前規制を留保していたが、今日では留保を撤回しています。

 また、国内法としては、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)」が1992(平成4)年に制定されています。第1条(目的)は、次の通りです。

  「この法律は、野生動植物が、生態系の重要な構成要素であるだけでなく、自然環境の重要な一部として人類の豊かな生活に欠かすことのできないものであることにかんがみ、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存を図ることにより良好な自然環境を保全し、もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与することを目的とする。」

 そして、規制と事業については、個体等の取扱いに関する規制(第2章、7条~)、生息地等の保護に関する規制(第3章、34条~)と保護増殖事業(第4章、45条~)とを定めています。

 ところで、「種」は「シュ」であって、SpeciesSeedではありません。ダーウィンの種の起源(On the Origin of Species by Means of Natural Selection)の種です、念の為。

 なおも余談ですが、ベッコウは、タイマイの甲羅を材料にしている細工品を指しています。が、ベッコウという言葉そのものは、鼈甲と書き、これはスッポンの甲羅を元々は指しています。「タイマイではなく、スッポンの甲羅を用いています」という虚偽の申し立てが横行した挙げ句、スッポンの甲羅ではなくて、タイマイの甲羅を指すように言葉が入れ換ったとのことです。