2018年3月26日月曜日

弁護士らしい話し(其の28)

「超低金利時代」ということ
 
 近時は、テレビを視聴するのは、専ら高齢者であって、若者は、ネット・スマホに時間を取られて、テレビ離れであるとのこと。
 とは言え、未だにテレビを日常的に視聴する我が身。
 地上波放送の面白なさと、一方、BS放送での高齢者を専ら対象としているセールスに呆れ気味。健康、サプリ、霊園・・・
 
 その中で、低金利の時代に、どのように資産運用をするべきか、との指南、押し付けアドヴァイスを散見。
 最近世上を騒がせている話題は、某地方銀行と組んだ(?)、シェアハウス経営なるビジネスモデルの売り込み。サラリーマンを相手に、不動産をローンで買わせ、低利借入に比して、賃料収入で楽々・・・との与太話し!!
 
 凡そ法律家で借家借地の問題を扱わないということは先ず考えられないところ、これら地主家主の苦心惨憺を身近かに長年見て来ている立場からは、新たに不動産を取得して、これを賃貸して、安定的に収益を上げ続ける・・・という話しは、専門家ならぬ素人、新規の物件取得者には、土台大難事の筈!?
にも拘わらず、斯様な儲かりまっせ!!ビジネスは只今盛況の様子。
 
 改めて世の中を見回すと、少子超高齢社会、その一方で赤字国債の累積による将来的な経済不安の様相。
 かくては、何か頼るべきツテを・・・何か賢明な方策は・・・となるのは、人情の然らしむるところ。
 しかし、既に土地神話は崩壊して久しく、人口減少は首都圏の一部を除いては顕著なところ。県庁所在地でも、空き家が目立つと言われて久しい此の頃。
 必ず儲かる商売は、これは儲かるからと人をして、金を出させる商売のみと、昔から言われているところ。
 
 結局、将来的な経済的クラシュ、崩壊の漠然たる不安を煽って、目先の儲け話しをして人に金を出さしめる、というのは、文字通り伝統的な手法であり、須らく人々が乗せられるところの模様。
 
 ならば、どのように処すべきか?
 これについては、橘 玲著「国家破産はこわくない」(2018年1月、講談社+α文庫)が一ツのヒントを示して呉れている様子。
 将来的に予想、或は予測、将又噂されている経済的困窮事態、それは膨張し続ける国債、財政赤字が何を惹き起すか・・・ということであり、それを魔物の如く、ともかく恐れるか・・・ハイパーインフレが生じるか・・・
と言い条、改めて歴史を振り返ると、一夜にして日本円が紙クズになるということは有り得ない話し。すなわち、第一次大戦後のドイツ、第二次大戦後の日本・・・前者はともかく、後者でのインフレ率は、1936(11)年から1954(29)年までの18年間で消費者物価指数が300倍になったとか。1949(24)まででは、200倍。そして、1945(20)年から1949(24)年までの比較で70倍というような数字が掲げられている様子。
 
 と分析して行くと、これらの背景には、膨大な戦時国債と戦争に因る国民財産の大幅な毀損があり、貨幣の価値を裏付けるべき物がそもそも無かったから、と考えれば至って当然の帰結。
 そして、インフレ、ハイパーインフレと考えて行くと、このような先の大戦後の事象が頭に浮かぶことは必至。
 であるが、只今の少子高齢、人口減少、膨張する赤字国債の帰結は、人々の心象の場面ではともかく、このような戦後の急激なものとは明らかに異質のもの、異なった程度のものである筈。
 
 しかし、その一方で、いつの時代にも「狼が来るゾ!」とのオオカミ少年は付き物。其処彼処に、ウロウロ、ウジャウジャ・・・
 このような不安に乗じて金を儲けようという族は、いつの時代も、どの国でも必ず存在。そして、活躍、跳梁。
そして、これに乗せられる人々も。
 
 高齢者に向かっては、資産の運用を説くよりは、資産を如何に費すべきか、を説く方が余程世の為、人の為になるものか・・・
 富は溜め込むことよりも、立派に費消することの方が難しいよう。