2016年2月25日木曜日

弁護士らしくない話し(其の14)


赤外線からインフラ

 紫外線は、UVと表現され、日焼の原因・癌を誘発として、日焼け止めの効能を謳ったUVカットという表現が多用されています。
 Ultraviolet radiationをUVとしています。()
 虹は、七色の円弧ですが、外側が赤色、内側が紫色です。
 この紫色の部分よりも波長が短かいのがUVであり、一方、赤色の部分よりも波長が長いのが赤外線です。が、赤外線は、URではなく、Infrared light、IRと略されるそうです。

 Infraredという言葉には、Infrastructureに通底するものがあるそうです。
 つまり、Infraという語頭の部分は、「下に」「下方に」「以下に」という意味を持つとのこと。
 ですから、Infraredは、赤色より下、波長としては長いものの、振動数においては低い、少ないというということでしょうか。
 Infrastructureは、(団体・組織などの)下部組織、下部構造を指称し、(国家・都市・地域社会などの)基本的施設、産業基盤などを指すようです。

 ところで、「下」を意味する語頭がInfraであるのに対し、「上」のそれはSupraであって、Superと同義ながら、よく複合語に用いられるとか。確か国産のクルマの名前にもあったように記憶。



() 「セクシャルバイオレット№1」は、桑名正博が歌った松本 隆作詞・筒美京平作曲の1979年のカネボウのCMで有名。同年の資生堂のCMは世良公則作詞・作曲の「燃えろいい女」。

2016年2月16日火曜日

弁護士らしい話し(其の14)


「モ」で始まる名前のフランス人
 

 敬愛するM教授の最終講義(「記念講義」と称されていましたが)を聴講してきました。

 フランス政府給費留学生となって、現地で3年間勉学に勤しんだ頃の話しを真に懐しそうに語っておられました。

 扨、法学研究者の教養という観点から、フランス人の知識人の話しがあり、その中に、「モ」で始まる名前の人が登場したものの、その異同が一瞬頭の中で分からず、改めて記憶を整理しつつも、若干の混乱を覚えることになりました。

 そこで、改めて「モ」で始まるフランス人達の名前を整理してみることにしました。

  ① モンテーニュ (153392) フランスの思想家
     Montaigne  宗教戦争(16世紀後半から17世紀前半にかけて、西ヨーロッパで、カトリックとプロテスタントの両教会の対抗の下の数多の戦争)の時代、「随想録(Essais)」(注)を記す。 

  ② モリエール  (162273) フランス古典喜劇の完成者
     Molière  「守銭奴」「タルチュフ」が有名。 

  ③ モンテスキュー(16891755)フランスの政治思想家・法学者
     Montesquieu ボルドーの高等法院長の後、著述家となる。「法の精神(Esprit des lois)」「ペルシア人の手紙」を記す。

  ④ モーパッサン (185093) フランスの小説家
     Maupassant  ゾラと並ぶ自然主義の代表者。「脂肪の塊」「女の一生」「ベラミ Bel-Ami 

 もっとも、国民国家Nation Stateとしてのフランスは、18世紀末のフランス革命以降に成立したとの言説もあることから、軽々にフランス人と称して良いものかどうか疑問はありますが。

 19世紀のバルザックも自身のことをフランス人と称していたかどうか・・・

「艶笑滑稽譚」ではロワール河沿いのトゥーレーヌ県のトゥール人と称していたような・・・



(注) パスカル(Pascal)(162362)がキリスト教の為に記したとされるものは、「瞑想録(Pensées)」。

2016年2月10日水曜日

弁護士らしい話し(其の13)


著作権について

 著作権法2条①項1号は、「著作物」とは「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と定義し、同2号は、「著作者」とは「著作物を創作する者をいう」としています。

 そして、10条で著作物が例示され、その①項3号は「舞踊又は無言劇の著作物」としています。

  東日本大震災からの復興に関する報道の中で、フランス人のシルヴィ・ギエム(Sylvie Guillem1965年生)()さんが福島で自身最後のボレロの公演をしたことが最近取り上げられていました。百年に一度のダンサーと評価されている人です。

  ところで、ボレロ(Boléro)は、モーリス・ラヴェル(Maurice Ravel18751937年)が1928年に作曲した名曲で、一度聞くと忘れ難い印象を与えます。テレビのコマーシャルでも多用されています。

 このボレロと言えば、思い出すのは、1981年のクロード・ルルーシュ(Claude Lelouch1937年生)監督の映画「愛と哀しみのボレロ(原題:Les Uns et les Autres 強いて訳せば、「とある人達とその余の人達」)」であり、モーリス・ベジャール(Maurice Béjart19272007年)の振り付けでエッフェル塔を背景に、アルゼンチン生まれのジョルジュ・ドン(Jorge Donn194792年)が踊ったボレロです。
 
 とは言いながら、ボレロは、元々はスペインの民族舞踊・舞曲で独特の4分の3拍子のもので、軽快さに特徴があり、このリズムを用いてラヴェルが作曲したものが有名となり、「ラヴェルのボレロ」と言われるようになったそうです。(闘牛士の上着の名称にも、ボレロというのがありますが)

 著作権に話しを戻しますと、ラヴェルのボレロは舞曲・楽曲として著作物であり、ルルーシュの映画も、ベジャールの振り付けも、ジョルジュ・ドンの実演も、その何れもが著作物として夫々に著作権が認められるべきことになります。

 もっとも、ラヴェルの著作権は、その没年から見て、既に消滅しているでしょうが。
 




() 百年に一人の逸材との評判の人物。初め、パリ・オペラ座バレエ団に属し、198412月に19歳で初主演の「白鳥の湖」で大好評を博す。1988年以降、退団し、イギリスをはじめ各地で公演。その後、コンテンポラリー・ダンスに取り組む。歯に衣着せず物を言うことから、あだなは「Mademoiselle Non」。自身の語るところでは、「野望は地球の救済」。

2016年2月3日水曜日

弁護士らしい話し(其の12)


著作権と意匠権

 経済産業大臣の引責辞任が姦しいところです。

 経済産業省の外局として我が国の知財制度の要の、特許庁があります。同庁は、特許、実用新案、商標、意匠を仕切っています。

 一方、ネット時代、デジタル情報の時代に、著作権を職掌しているのは、文部科学省の外局の文化庁です。更に、知財、知的財産権として大切なものとしては、種苗法の品種、品種登録、育成者権があり、これは、農林水産省が所轄しています。

 扨、これら知的財産権の問題は、これまで事業者、或は著述業者等々のプロの世界を規律する法律群であると捉えられて来ました。が、ネット社会の出現により、特に著作権に関する諸問題が事業者、プロの作者に限られず、万人一般の問題であることになって来ました。

 合衆国の年末の大統領選を控えて、その候補者達は、どうもTPPについて掌を返したように、消極、冷淡な姿勢を示し始め、このままではその発足に至らない可能性も囁かれ始めていますが、TPPが発足すれば、著作権の保護期間は更に伸長されることになります。つまり、現行の著作権法では、その保護期間を著作者の死後50年と定めていますが、これが70年に伸長されることになります。これまでも孫まで食える、と言われていたものが曾孫まで養われる、と噂されています。このような強力社会的圧力は、ハリウッドに由来します。

 我が国では、2005(平成17)年4月から知財高裁(知的財産高等裁判所)が東京高等裁判所の(裁判所法に基づかない、民事訴訟法6条3項の定めるところによる)特別な支部として設けられ、知財事件の唯一の控訴審裁判を司っています。

 この知財高裁が昨年・平成27年4月14日に興味深い判決を下しました。

 

 幼児用の椅子という実用品について、美術の著作物に該当する、法的用語では著作物性を認めたものとされています。

 ノルウェーのデザイナーが作り、輸入、販売されているTRIPP TRAPPという名前の「赤ちゃんから大人まで、成長する椅子」と銘打たれた子供の成長に合わせ座面や足置き台を調整する機能を備えた幼児用の椅子について、思想又は感情を創作的に表現したもの(著作権法2条①項1号)として美術の著作物に該当する判断を示しました。

 もっとも、これは、総論として、このように判断しつつも、各論としては、著作権を侵害していると訴えられていた製品については、著作物性が認められる部分は類似していない、と判断はしました。

 

 このような製品のデザイン(意匠)を保護する制度としては、意匠法がありますが、その保護期間は20年である一方、若し著作権で守られることになるとそれは、著作者の死後50年間となります。

 

 意匠法は産業の発達を保護し、一方、著作権法は文化の発展を目的とすると考えられ、事業者なり、職業的著作者なりが長らくその保護の主体でした。

 ところが、IT技術の発達の結果、ネット社会が出現し、特に、著作権は、広く市民の一人一人が権利者にも、その侵害者にもなり得る時代が既に到来しています。

 そのような時代の中に、市民生活の中の実用品についても、著作権が認められ得ることをこの判決は原則として謳っています。

 甚だ刺激的であって、真に騒々しくリスキーな面を伴った話しです。

 保護が認められる、ということは、逆に侵害者にもなり兼ねない、という話しです。

弁護士らしくない話し(其の13)


日本三名瀑と日本三大○○

 

 茨城県下の名瀑を探ねた土産ということで、鮎の姿煮を貰いました。関西では甘露煮とも言っています。鮎が大好物であることを知っての、有難い心遣いです。

 和歌山県那智勝浦町の那智の滝、栃木県日光市の華厳の滝、そして、この茨城県の滝を併せて日本三名瀑と言うそうです。

 現地は、水戸と郡山を結ぶJR水郡(すいぐん)線の駅から更に山中に割け入ったところです。付近には、人家も無い場所に専ら観光用に架けられた「竜神大吊橋」という文字通り人工の観光スポットも有ります。

 歌僧西行が詠んだ歌も披露されています。

「花もみぢ よこたて(経緯)にして 山姫の 錦織り出す 袋田の滝」

 

 ところで、日本三景をはじめ、三名所、三名勝、三大○○というのは、よく見掛けるところです。

 日本三大海浜、となると、千葉県の九十九里浜、鹿児島県の吹上浜の2ツは大方の挙げるところながら、3ツ目は?ネットでは、「日本三大一覧」が紹介されるも、「日本三大海浜」は無いよう。

 

「三国一」、これは古来の表現で、唐、天竺、扶桑(我が国、日本)で一番の・・・という讃え方。

 江戸時代には、「三国一」というのが流行った様子。

 その後、開国、明治となり、次に流行ったのは、「東洋一」との標語。浅草に大正にもて囃されたのが「十二階」「凌雲閣」。その呼び声が「東洋一」。一体全体、この場合の東洋とは?この「東洋」という言葉に拘ったマニアックな書籍も読んだ記憶があります。

 

 扨、話しは戻り、三大なるものの有難さと逆にそのこじつけ気味には微苦笑を誘うところがあります。

 

 依って以て、日本三名瀑のドンジリは、既に西行の歌に出ている袋田の滝とのこと。が、他に比べると些か・・・

 

 むしろ、一大名瀑と称して恥ないものとしては、富山県の称名滝、標高1000mの地点にある落差日本一の350m。因に、滝については、「百名瀑」「二百名瀑」という書籍も売れています。

 

 追而、これら三名瀑は、偶然ですが、観音霊場巡りの旅程と何れも近接しています。

 那智の滝は、西国三十三所の第一番の那智山青岸渡寺の境内、華厳の滝は、坂東三十三ヶ所の第十八番の日光山中禅寺への途中、そして、袋田の滝は、同じく第二十一番の、最大の難所と言われる八溝山日輪寺の道筋から脇へ入ったところ。